さくらすく│Sweet Candy

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Sweet Candy

 時間に関係なく駅前の交通量は多い。そして朝や夕方の時間帯は、渋滞にもなりやすい。
 それが都会のあるべき姿であり、東京という街。
 人口密度も高いと通勤手段は、電車や地下鉄に固まる。しかし車で出勤を余儀なくされる会社員もいることを忘れてはならない。都会でも車は、移動手段の一つでもあった。
「無理をしてまで迎えに来なくても、タクシーを使って帰った。だが……」
 渋滞に巻き込まれ、克哉が運転する車が前にも後ろにも動けなくなる。
「なんですか?」
 動かなくなった列に舌打ちした。二度目の渋滞となると苛立ちが増す。
 五日振りに聞く恋人の声さえも今は、心地いいと思えない。
 一日早く出張から帰ってきた御堂を東京駅まで迎えに行った。出張の間にゴルフ接待もこなし、いつもより荷物が多い。
 MGNに席がある頃からゴルフもしていたのか、引っ越しのときに御堂はゴルフバッグを持ってきていた。
 たいして珍しいことでもないが、腰を悪くしやすいスポーツなだけに、控えて欲しいとそのバッグを見て克哉は思っていた。
「このままだと夜になるんじゃないのか?」
 車の混み具合をみて御堂なりの意見が飛ぶ。
「どうだろうな」
 東京駅へ向かっている最中に交通事故での渋滞に巻き込まれ、遠回りを余儀なくされた。そして予定より大幅に遅れて待ち合わせ場所についていた。そのとき御堂に怒られた。
 怒られた原因は、迎えに行ったのが遅くなったわけではない。
 今も苛立ちが隠せず、煙草に手が伸びそうになるのを必死に抑えている。車の中が煙草臭いと車に乗るなり怒られた。喚起をしながら走っていたと言っても聞く耳をもなかった。
「タクシーで帰っても一緒だったかも知れないと思うと、君が迎えに来てくれて、よかったのかも知れない」
 一向に動く気配がない車の列を横目に、口数が多い御堂の話を適当に聞き流す。
「どっちなんですか」
 渋滞でなければ、アクセルを踏んで荒っぽい運転ができたのにと進む気配がない道路の真ん中で毒づく。
 長時間待たされるのを覚悟して、今日はよく喋る恋人をみる。
「後者だ。ありがとう、佐伯」
 しかし、その言葉と柔らかな笑みが克哉の心を奪い去っていた。今、さっきあったことが白紙になる。
 不意打ちでもないその笑みこそ、御堂の最大の武器とも言え、咄嗟に顔を前へ戻した。
「そんなに拗ねるんじゃない」
 顔に出ていたかと内心ひやりとする。
「拗ねてません」
「私には、そうは見えない。私が留守中に何かあったんじゃないのか?」
 何かに感づいているのか、御堂の心配する姿に言葉がつまる。
 御堂が居なかった五日間は、充実どころか御堂がまだ引っ越してくる前の日々に戻ったと頭を切り替えて生活をしていた。
「何もなかった」
 そして隠し事もないまま正直に答えた。
 たった五日間でも御堂の声や姿がないのは、物足りなさを感じた。隣にいて当たり前の存在だからだろうか。オフィスでさえも習慣で御堂の姿を目が探していた。
 変わったことは何一つない。
 例え探していたことが変わったことだとしても、御堂の存在がそれだけ克哉の中で大きな存在へとなっていたと言えた。
 しんと静まり返る車内。あれだけ話しかけてきていた御堂が喋らない。
 帰ってきたばかりで疲れているのだろうと気を使う。このまま家へと帰り、夕食はケータリングを頼もうと考えていると列が少しずつ動き出す。
 焦らずにアクセルを踏み車間距離を保ちながら流れ出した列に安心する。
「本当に何もなかったか?」
 車の流れとともに黙っていた御堂の口が開く。
「諄い。俺を疑うのはベッドの中だけにしろ」
 またよからぬ事を考えていると察する。
 そして車線変更のために方向指示器を出して車線を変えた。
「私の思い違いだったようだ」
「予定を変更する。このままホテルへいく」
 渋滞は、少しずつだが解消し始めてきている。
 大通りを抜けたら近くにホテルがある。そこへ行き、御堂の口を塞ごうとした。
「君は……まあ、いい。今日だけは、君の我が儘に付き合うとしよう」
 小さく笑う声が聞こえ、その声に眉間に皺が寄る。
 今日がバレンタインでも、イベント行事だからと優しくするつもりは克哉にはない。
 外回りの帰り道で偶然、御堂が出張から帰ってきただけであり、バレンタインに合わせたかまでは、ベッドの中で明らかになる。



Fin
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